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奇門遁甲 格局辞典|吉凶・象意・活用法を網羅した完全ガイド

奇門遁甲と金函玉鏡の基礎知識
  1. I. 奇門遁甲の基礎概念と格局の意義
    1. 奇門遁甲とは:その起源と構成要素の概説
    2. 格局の重要性:天・人・地三盤における格局の役割
    3. 吉凶判断の基本原則:五行相生相剋、陰陽干、甲庚関係、門・宮・星・奇・儀の相互作用
    4. 奇門遁甲の主要構成要素と象意
  2. II. 主要な吉格(吉兆の格局)の詳細解説
      1. 青龍返首(戊+丙)
      2. 飛鳥跌穴(丙+戊)
      3. 九遁(Nine Dun)
      4. 三奇得使
      5. 玉女守門
      6. 三奇貴人升殿
      7. 天顯時格(輔大吉時とも)
      8. 三詐(Three Zha)
      9. 五假(Five Jia)
      10. 三奇之霊
      11. 奇遊禄位
      12. 歡怡
      13. 奇儀相合
      14. 門宮和義
  3. III. 主要な凶格(凶兆の格局)の詳細解説
      1. 値符飛宮(戊+庚)
      2. 天乙伏宮(庚+戊)
      3. 太白入熒(庚+丙)
      4. 熒入太白(丙+庚)
      5. 青龍逃走(乙+辛)
      6. 白虎猖狂(辛+乙)
      7. 朱雀投江(丁+癸)
      8. 騰蛇夭矯(癸+丁)
      9. 反吟大格(庚+癸)
      10. 小格/移蕩格(庚+壬)
      11. 刑格(庚+己)
      12. 天網四張(癸+癸)
      13. 歳格、月格、日格、時格(庚+年/月/日/時干)
      14. 悖格(丙+値符/年月日/時干)
      15. 六儀撃刑
      16. 三奇入墓
      17. 三奇受刑(三奇受制)
      18. 時干入墓
      19. 門迫
      20. 大局伏吟
      21. 大局反吟
      22. 五不遇時
  4. IV. 十干克応と格局の複合的解釈
      1. 十天干の基本象意と相互作用
      2. 各天干の組み合わせが形成する格局とその象意・吉凶判断
      3. 格局解釈における多層的な視点:門・星・神・宮との関係性
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I. 奇門遁甲の基礎概念と格局の意義

奇門遁甲とは:その起源と構成要素の概説

奇門遁甲は、中国の神秘学における予測学の特有な分野であり、大六壬、太乙神数と並び「三式」と称される高度な術数体系である 。その起源は古代に遡り、伝説によれば黄帝が蚩尤との戦いにおいて天神から授けられた符訣を基に、風后が演繹したとされる 。その後、姜子牙、黄石公、張良といった歴史上の賢人たちがこれを簡素化し、現在の十八局(陽遁・陰遁各九局)の形に精緻化されたと伝えられている 。  

奇門遁甲の「奇門遁甲」という名称は、その主要な構成要素に由来する。

  • 三奇(San Qi): 「奇」とは、(日奇)、(月奇)、(星奇)の三つの天干を指します。これらは特に吉利な要素として扱われます。
  • 六儀(Liu Yi): 天干の「」は最も尊貴でありながら隠遁するため、甲子、甲戌、甲申、甲午、甲辰、甲寅の「六甲」は、戊、己、庚、辛、壬、癸の「六儀」の中に隠れます。
  • 八門(Ba Men): 「門」とは、休、生、傷、杜、景、死、驚、開の八つの門を指し、事物の発展段階や人間の行動を象徴します。このうち、開門休門生門は「三吉門」とされ、死門驚門傷門は「三凶門」とされます。杜門と景門は「中平門」です。排宮法が一般的ですが、飛宮法ではこれに「中門」を加えて九門とする場合もあります。
  • 九星(Jiu Xing): 天蓬、天任、天冲、天輔、天禽、天心、天柱、天英、天芮の九つの星は、天体の影響や事物の性質を表します。
  • 九宮(Jiu Gong): 乾、坎、艮、震、巽、離、坤、兌の八卦に対応する八つの宮と、中央の宮から成り、地理的な方位や地利、具体的な状況の基礎条件を象徴します。

奇門遁甲の占測は、天、人、地の「三盤」に分かれて行われます。これらは「三才」を象徴し、それぞれが異なるレベルの情報を表します。天盤には九星が、中盤(人盤)には八門(または九門)が、地盤には八宮が配置され、地盤は静止不動です。天盤は天の吉凶を、人盤は人の行動による吉凶を、地盤は地の吉凶をそれぞれ示唆します。

格局の重要性:天・人・地三盤における格局の役割

奇門遁甲における「格局」とは、天干、地支、門、星、神などが九宮の中で特定の組み合わせを形成する状態を指します。これらの組み合わせは、特定の事柄や状況の性質、結果、そして吉凶を象徴的に示します。格局の解釈は、奇門遁甲を用いた予測と戦略立案の核心をなします。

奇門遁甲の格局は、単なる未来の予測に留まりません。この体系は、古代の戦略学や計画学の概念を内包しており、事態の推移を理解し、最適な行動を選択するための枠組みを提供します。格局は、天の時(天盤の九星)、人の行動(人盤の八門)、地の利(地盤の九宮)という三つの要素がどのように相互作用し、特定の状況を生み出すかを示します。例えば、「星克門吉、門克星凶」(星が門を剋すれば吉、門が星を剋すれば凶)という原則は、天の要素と人の要素の間の相互作用が結果に与える影響を明確に示しています。

この体系が持つ動的な性質は、静的な要素と動的な要素の相互作用によって事態が形成されるという理解に基づいています。九宮は固定された空間的基盤を表す一方で、九星や八門、そして三奇六儀は時々刻々と変化し、地盤の上を移動します。格局は、この絶え間ない変化の中で、特定の瞬間に現れるエネルギーの配置を捉えます。したがって、格局を読み解くことは、単に結果を言い当てるだけでなく、宇宙の力(天)、人間の選択(人)、そして環境の条件(地)がどのように絡み合い、ある事態を形成するのかを理解し、それに基づいて最も有利な行動を計画するための指針となります。これは、奇門遁甲が単なる運勢判断を超え、戦略的な意思決定のための強力なツールとして機能する所以です。

さらに、奇門遁甲は単なる受動的な予測ツールではなく、積極的に行動を促す戦略的な枠組みとして機能します。格局の判断は、特定の行動がいつ、どのような条件下で最も効果的であるかを示す「行動指針」としての側面が強いです。例えば、「攻城」や「守城」、「盗賊」といった軍事的な事柄に関する詳細な占断方法が古書に記されていることは、この術が古代において具体的な戦略立案に深く関わっていたことを示しています。また、「九遁」や「三詐五假」といった特定の格局は、隠密行動、欺瞞、援軍の要請など、具体的な戦略的行動のタイミングや方法を明示しています。これらの格局は、単に吉凶を告げるだけでなく、特定の目的を達成するために取るべき行動の種類と、その行動が成功する可能性のある条件を詳細に提示します。このため、奇門遁甲は、事態の推移を予測するだけでなく、その予測に基づいて最適な戦略を実行するための「行動規範」を提供する、実践的な戦略学としての性格を強く持ちます。

吉凶判断の基本原則:五行相生相剋、陰陽干、甲庚関係、門・宮・星・奇・儀の相互作用

奇門遁甲における格局の吉凶判断は、複数の要素の相互作用に基づいて行われる複雑なプロセスです。その根底には、五行(木、火、土、金、水)の相生相剋関係陰陽の性質天干の特定の組み合わせ、そして門、宮、星、奇、儀といった各要素の特性があります。

  • 五行相生相剋と比和: 格局を構成する門、宮、星、奇、儀の五行属性が互いに相生(生み出す関係)または比和(同じ五行)である場合、一般的に吉と判断されます。逆に、相剋(打ち勝つ関係)、相冲(衝突)、相刑(刑罰)、相害(害)、入墓(墓に入る)の関係にある場合、凶と判断されます。これは、エネルギーの流れがスムーズであるか、阻害されるかを示す基本的な指標となります。
  • 陰陽干の組み合わせ: 一般的な傾向として、甲、乙、丙、丁、戊の五つの陽干が組み合わさる格局は吉となることが多いです。一方、己、庚、辛、壬、癸の五つの陰干が組み合わさる場合、凶となる傾向があります。
  • 甲と庚の関係: 奇門遁甲において、「甲」は主帥であり、最も尊貴な天干とされますが、盤上には直接現れず、六儀の中に隠遁します。この「甲」が最も恐れるのが「」です。庚金は甲木を剋すため、予測対象の符号が庚を伴う宮に位置する場合、多くは凶格と判断されます。庚は白虎の象意を持ち、破壊力や阻害、敵対を意味するため、その出現は事態の停滞や衝突の主要な指標となることが示されています。これは、奇門遁甲の盤を解読する上で、庚の配置が潜在的な負の要素を迅速に特定するための重要な手がかりとなることを意味します。
  • 門迫(Men Po)と宮迫(Gong Po): 「門迫」とは、八門の五行がその落宮の五行を剋する場合を指します。例えば、火に属する景門が金に属する乾宮や兌宮に入る場合がこれに当たります。吉門が「迫」に遭遇すると、その吉意は減少または失われ、凶門が「迫」に遭遇すると、その凶意はさらに増幅されます。これは、人の行動が地の状況に阻害されることを示します。
  • 入墓(Ru Mu): 天干がその「墓」となる宮に落ちる場合、その天干のエネルギーは抑制され、事態の停滞や無力化、行動不能を意味します。例えば、乙奇が乾六宮(乙の墓は戌)や坤二宮(乙の墓は未)に落ちる場合がこれに当たります。
  • 撃刑(Ji Xing): 特定の六儀が特定の宮に落ちることで、地支の「刑」の関係が生じる場合を指します。例えば、甲子戊が震三宮(地支卯)に落ちると子卯相刑となります。これは極めて凶とされ、いかなる行動も災難を招くとされます。
  • 伏吟(Fuyin)と反吟(Fanyin): これらは個別の天干の組み合わせだけでなく、盤全体の状況を示す重要な概念です。
    • 伏吟: 九星や八門が本来の宮に留まる状態、または天盤と地盤の天干が同じである状態を指します。これは一般的に、事態の停滞、遅延、反復、または内部的な問題を象徴します。動的な行動には不向きですが、財産を収斂したり、借金を取り立てたり、現状維持には有利とされます。
    • 反吟: 九星や八門が対冲する宮に落ちる状態、または天盤と地盤の天干が対冲の関係にある状態を指します。これは事態の逆転、不安定さ、反復、または外部的な問題を象徴し、一般的にほとんどの事柄において凶とされます。途中で挫折したり、何度も繰り返されたりする傾向があります。

これらの伏吟と反吟といった盤全体の状態は、個々の格局の吉凶を大きく変調させる力を持つことが重要です。例えば、「天顕時格」は、盤が伏吟局であっても凶ではなく吉に転じるとされます。これは、盤の全体的な動態が個別の天干の組み合わせの意味合いを増幅させたり、打ち消したりする強力な調整要素として機能することを示しています。したがって、奇門遁甲の正確な解釈には、個々の格局の定義だけでなく、これらの全体的な状態がもたらす影響を深く理解することが不可欠です。これは、奇門遁甲の解釈が、単なる要素の羅列ではなく、複数の層にわたる情報が相互作用する複雑なプロセスであることを示唆しています。

奇門遁甲の主要構成要素と象意

奇門遁甲の盤は、複数の要素が組み合わさって構成され、それぞれが特定の象意と役割を持ちます。これらの要素の理解は、格局の解釈の基礎となります。

要素名構成要素主要な象意と役割
三奇乙、丙、丁日奇、月奇、星奇。吉利な要素、事態の好転や強化を促す。
六儀戊、己、庚、辛、壬、癸天干「甲」の隠遁場所。特定のエネルギーや状況の基礎となる。
八門休、生、傷、杜、景、死、驚、開人の行動、事物の発展状態、吉凶変化を象徴。開・休・生は吉門、死・驚・傷は凶門、杜・景は中平門。
九星天蓬、天任、天冲、天輔、天禽、天心、天柱、天英、天芮天体の影響、事物の性質や心性、吉凶属性を表す。
九宮乾、坎、艮、震、巽、離、坤、兌(中央含め)地理的な方位、地利、具体的な環境条件、事物の基礎を表す。
三盤天盤(九星)、人盤(八門)、地盤(九宮)天の時、人の行動、地の利を象徴する三才。占測の主要な層。

II. 主要な吉格(吉兆の格局)の詳細解説

奇門遁甲には、特定の天干の組み合わせや他の要素との配置によって形成される多くの吉兆の格局が存在します。これらの格局は、特定の行動や状況が有利に働くことを示唆し、成功や発展の機会を指し示します。特に、乙、丙、丁の「三奇」は、多くの吉格において中心的な役割を果たします。これらの三奇は、単に吉兆を示すだけでなく、事態を好転させ、望ましい結果を可能にする触媒として機能することが示されています。奇門遁甲の盤を読み解く際、三奇の位置と他の要素との相互作用を特定することは、潜在的な好機や有利な状況を見極めるための第一歩となります。

また、吉格は単に幸運を告げるだけでなく、具体的な戦略的意図を持つことが多いです。多くの吉格は、「百事皆吉」(あらゆる事柄が吉)とされつつも、それがどのような種類の活動(例えば、就職、訴訟、建築、軍事行動、商売、婚姻など)に特に有利であるかを明示しています。これは、奇門遁甲が、いつ、どのように行動すれば望ましい結果を達成できるかを示す「戦略的プレイブック」としての役割を担っていることを示唆しています。

青龍返首(戊+丙)

  • 構成要素: 天盤の甲子戊が地盤の丙奇に加わる、すなわち「戊+丙」の組み合わせです。
  • 格局名/特徴: 青龍返首、龍回首、青龍回頭とも称されます。甲木は青龍を表し、丙火は甲木の子供にあたるため、母子が互いを顧みる様子に例えられます。また、丙火が庚金を剋して元帥である甲木を救護できるため、吉格とされます。
  • 主要な象意と判断: 就職、訴訟、移転、求財、建築など、あらゆる事柄において大吉大利を示します。貴人の引き立てがあり、物事が平穏な状態から成長し、旺盛に向かう象意があります。
  • 吉凶判断: 大吉。ただし、門が宮を剋する場合や、地盤が震三宮(子卯相刑の関係)である場合は、吉事が凶に転じる可能性があるため注意が必要です。

飛鳥跌穴(丙+戊)

  • 構成要素: 天盤の丙奇が地盤の甲子戊に加わる、すなわち「丙+戊」の組み合わせです。これは「青龍返首」とは逆の配置です。
  • 格局名/特徴: 飛鳥跌穴、鳥跌穴とも称されます。丙火は南方の朱雀を表し、母である甲木のもとに戻る様子が鳥が巣に帰るようであるため、この名がつけられました。木火相生の関係であるため、吉格とされます。
  • 主要な象意と判断: 就職、求財、訴訟、建築、婚姻など、あらゆる事柄において吉とされます。物事が半分の労力で倍の成果を上げる効果があり、「不労而獲」(労せずして得る)の象意があります。
  • 吉凶判断:

九遁(Nine Dun)

九遁は、奇門遁甲における特定の吉格の総称であり、天地人三遁が凡事において吉とされ、あらゆる事柄に適用可能です。残りの六遁は、その具体的な用途に応じて吉凶が変化します。九遁は「門」を導きとし、門が宮を剋する「門迫」を忌むとされます。

  • 天遁:
    • 構成要素: 天盤丙奇(月奇)、門盤生門、地盤丁奇(星奇)の組み合わせ。二奇が生門と並び、二火が艮土(生門は土に属し、艮宮に位置)を生じるため、吉格となります。
    • 主要な象意と判断: 百事生旺で、何事も吉利となります。行軍、戦争、上書、求官、商売、婚姻などに有利です。
  • 地遁:
    • 構成要素: 天盤乙奇(日奇)、門盤開門、地盤六己の組み合わせ。己は地戸であり、開門が日精の庇護を得るため、吉格となります。
    • 主要な象意と判断: あらゆる事柄において吉とされます。陣営の設置、待ち伏せ、建築修造などに適しています。
  • 人遁:
    • 構成要素: 天盤丁奇(星奇)、門盤休門、神盤太陰の組み合わせ。星精の庇護を得るため、吉格となります。
    • 主要な象意と判断: 探索、隠匿、和談、求賢、結婚、取引などに吉とされます。百事において和合を促します。
  • 風遁:
    • 構成要素: 天盤乙奇(日奇)、開・休・生門のいずれか、地盤巽四宮に臨む、または地盤六辛が巽宮に落ちる組み合わせ。巽木は風を主り、乙奇と吉門を得るため、風遁となります。
    • 主要な象意と判断: 風が西北から来る場合は順風で敵を攻撃するのに適し、風が東南から来る場合は敵が東南にいるため交戦すべきではありません。水戦、火戦に有利で、砂塵を巻き起こすことができます。
  • 雲遁:
    • 構成要素: 天盤乙奇(日奇)、開・休・生門のいずれか、地盤六辛の組み合わせ。雲精の庇護を得るため、吉格となります。
    • 主要な象意と判断: 求雨、陣営の設置、軍械の製造に適しています。また、形を隠して敵を欺いたり、祈祷、雨乞い、学道、修仙、隠遁などにも有利とされます。
  • 龍遁:
    • 構成要素: 天盤乙奇(日奇)、開・休・生門のいずれか、地盤坎一宮(水中に龍がいる象意)または六癸の組み合わせ。
    • 主要な象意と判断: 敵の捕獲、水戦、橋の修理、井戸掘りなどに適しています。
  • 虎遁:
    • 構成要素: 天盤乙奇(日奇)が休門または生門と合し、地盤六辛が艮八宮(寅虎)に臨む、または天盤甲申庚が開門と合し地盤兌宮(庚辛金は白虎)に臨む組み合わせ。
    • 主要な象意と判断: 陣営の設置、隠匿、待ち伏せ、建築修造などに適しています。また、招安(投降を促す)、防守、兵を隠す、計略を用いる、狩猟、捕獲、出兵、戦陣などにも有利とされます。
  • 神遁:
    • 構成要素: 天盤丙奇(月奇)、門盤生門、神盤九天の組み合わせ。九天の神の庇護を得るため、吉格となります。
    • 主要な象意と判断: 虚を攻める、道を切り開く、川を塞ぐ、像を造る、兵卒を教化するなどに適しています。出師、大戦、祭祀、迎神、邪気払い、病気治療などにも有利とされます。
  • 鬼遁:
    • 構成要素: 天盤丁奇(星奇)、門盤杜門(人間の門が塞がれる象意)、神盤九地(地獄に鬼がいる象意)の組み合わせ、または丁奇と開門が九地と合する場合。
    • 主要な象意と判断: 敵陣への奇襲、偽装、虚の待ち伏せに適しています。また、偵察、間諜活動、流言飛語を流すことにも有利とされます。家の中に鬼がいる場合は、符を書いて鎮めるのが吉とされます。

三奇得使

  • 構成要素: 天盤のの三奇が地盤の値使門に加わる組み合わせです。具体的には、天盤乙奇が地盤甲戌己または甲午辛に、天盤丙奇が地盤甲子戊または甲申庚に、天盤丁奇が地盤甲辰壬または甲寅癸に加わる場合を指します。
  • 象意: 三奇がその特性を十分に発揮し、目標達成を助ける象意があります。
  • 吉凶判断: 事を行うのに有利であり、吉門がない場合でもわずかな助けがあります。吉門と合致すれば、主客ともに吉となります。

玉女守門

  • 構成要素: 丁奇(玉女とも呼ばれる)が、門盤の値使門が地盤の丁奇に遭遇する組み合わせです。
  • 象意: 丁奇が直使門となる状態です。
  • 吉凶判断: 宴会、喜び事、婚姻事などに有利とされます。

三奇貴人升殿

  • 構成要素: 乙奇が震宮(東方)、丙奇が離宮(南方)、丁奇が兌宮(西方)に臨む組み合わせです。
  • 象意: 乙奇は「日出扶桑」(太陽が昇る場所)、丙奇は「月照端門」(月が門を照らす)、丁奇は「星見西方」(星が西方に見える)の象意を持ちます。貴人が正殿に昇り、繁栄する様子を表します。
  • 吉凶判断: この格局が成立する時は、あらゆる事柄を行うのに適しているとされます。

天顯時格(輔大吉時とも)

  • 構成要素: 甲・己日の甲子時・甲戌時、乙・庚日の甲申時、丙・辛日の甲午時、丁・壬日の甲辰時、戊・癸日の甲寅時といった、当番の六甲大将が透出する時、または日干と相合する時を指します。
  • 象意: この格局が成立する時は、たとえ奇門の盤が伏吟局であっても、凶ではなく吉に転じるとされます。
  • 吉凶判断: 行兵、戦闘、上官、参謁、求財、遠行など全てにおいて吉とされます。罪を犯した者も赦免されることがあります。

三詐(Three Zha)

三詐は、開、休、生の三吉門が乙、丙、丁の三奇と合し、さらに太陰、六合、九地の三陰神の助けを得る場合に形成される吉格です。商売、遠行、婚姻など、あらゆる事柄において吉とされます。

  • 真詐: 三吉門が三奇と合し、太陰に乗る場合。
  • 休詐: 三吉門が三奇と合し、六合に乗る場合。
  • 重詐: 三吉門が三奇と合し、九地に乗る場合。
  • 吉凶判断: 吉門が最上位、奇がその次、詐がさらに次とされ、奇門が全て合致する場合は最上吉となります。ただし、協力者がこの格に遭遇した場合、予測対象者は騙される可能性があるので注意が必要です。

五假(Five Jia)

五假は、鋭気を借りて事を行うことを指し、事柄がその気に合致すれば有利ですが、そうでなければ不利となります。五假は「迫墓」を忌むとされます。

  • 天假:
    • 構成要素: 景門が乙、丙、丁の三奇と合し、九天に乗る場合。
    • 主要な象意と判断: 顕揚の事に適し、事を拡大するのに有利です。争戦訴訟、貴人への謁見、求官、上書献策、揚兵頒号、盟約の申明などに適しています。
  • 地假:
    • 構成要素: 杜門が丁、己、癸と合し、九地または太陰または六合に乗る場合。
    • 主要な象意と判断: 潜伏、待ち伏せ、逃亡、災難からの回避、私事の探求に適しています。非常に陰の象意を持ち、秘密裏の操作や陰謀に適するとされます。
  • 人假:
    • 構成要素: 驚門が六壬と合し、九天に乗る場合。
    • 主要な象意と判断: 逃亡者の捕獲に適しており、「太白入熒」の格局と重なれば、必ず捕獲できるとされます。
  • 神假(物假とも):
    • 構成要素: 傷門が丁、己、癸と合し、九地に乗る場合、または六合に乗る場合。
    • 主要な象意と判断: 埋蔵、隠匿に適しており、人に知られにくいです。祈祷、債務回収、捕獲、取引、隠匿などにも適しています。
  • 鬼假(神假とも):
    • 構成要素: 死門が丁、己、癸と合し、九地に乗る場合。
    • 主要な象意と判断: 亡霊の供養、民衆の安寧、破土修墓、邪の伐採、狩猟に適しています。

三奇之霊

  • 構成要素: 三奇(乙、丙、丁)、四吉神(太陰、六合、九地、九天)、三吉門(開、休、生)がそれぞれ一つずつ、その方位に臨む組み合わせです。
  • 吉凶判断: 「吉道清霊」とされ、事を行うのに全て吉とされます。

奇遊禄位

  • 構成要素: 乙奇が震宮(卯は乙木の臨官禄地)に到る、丙奇が巽宮(巳は丙の臨官禄地)に到る、丁奇が離宮(午は丁火の臨官禄地)に到る組み合わせです。
  • 吉凶判断: 本禄の位とされ、三吉門と合すれば、上官卦任、求財祈福など、あらゆる謀事が吉利となります。

歡怡

  • 構成要素: 三奇が六甲値符の宮に臨む組み合わせです。
  • 象意: 値符は衆神の首であり、その場所では全ての悪が消散し、さらに三奇に遭遇すると、何事も有利に進むとされます。将士を慰撫すれば、衆情が悦服する象意があります。
  • 吉凶判断: あらゆる謀事が有利となります。

奇儀相合

  • 構成要素: 乙庚、丙辛、丁壬が「奇合」、戊癸、甲己が「儀合」となる組み合わせです。
  • 吉凶判断: 吉門を得れば、万事に和合の象意があり、和解、解決、引き分け、等分を主るとされます。

門宮和義

  • 構成要素: 宮が生門を生じる場合を「」、門が宮を生じる場合を「」とします。
  • 吉凶判断: 吉門に遭遇すれば万事吉とされます。

III. 主要な凶格(凶兆の格局)の詳細解説

奇門遁甲には、特定の天干の組み合わせや他の要素との配置によって形成される多くの凶兆の格局が存在します。これらの格局は、事態の停滞、困難、損失、または災難を示唆し、行動を避けるべき時や注意すべき点を指し示します。特に、**庚(庚金)**は、奇門遁甲において最も凶悪な神の一つとされ、その出現は事態の停滞や衝突の主要な指標となることが示されています。庚を含む多くの格局が凶格とされるのは、甲木(主帥)を剋すその性質に由来します。これは、奇門遁甲の盤を読み解く上で、庚の配置が潜在的な負の要素を迅速に特定するための重要な手がかりとなることを意味します。

また、伏吟反吟といった盤全体の状態は、個々の格局の吉凶を大きく変調させる力を持つことが重要です。これらの基本的な状態は、個別の天干の組み合わせが持つ意味合いを増幅させたり、打ち消したりする強力な調整要素として機能します。例えば、一般的に吉とされる格局であっても、門迫や撃刑といった条件が加わることでその吉意が損なわれることがあります。このことは、奇門遁甲の解釈が、単なる要素の羅列ではなく、複数の層にわたる情報が相互作用する複雑なプロセスであることを示唆しています。盤全体の動態を深く理解することは、正確な判断を下す上で不可欠です。

値符飛宮(戊+庚)

  • 構成要素: 天盤の戊が地盤の庚に加わる組み合わせです。
  • 格局名/特徴: 値符飛宮、青龍失勢格とも称されます。甲木(青龍)と庚金(白虎)が闘う象意があり、陽金が陽木を剋するため、大凶とされます。
  • 主要な象意と判断: 吉事が吉とならず、凶事がさらに凶となります。商売は破財、病気は非常に凶とされます。仕事は異動、結婚は離婚の象意があります。
  • 吉凶判断: 大凶

天乙伏宮(庚+戊)

  • 構成要素: 天盤の庚が地盤の甲子戊に加わる組み合わせです。
  • 格局名/特徴: 天乙伏宮、太白伏宮格とも称されます。陽金が陽木を剋するため、大凶とされます。
  • 主要な象意と判断: あらゆる事柄において謀為すべきではなく、大凶です。主客双方に不利であり、人を求めても来ず、人を待っても来ず、遠行は盗賊に遭遇します。何事も不利となります。仕事は異動、結婚は破局が多いとされます。
  • 吉凶判断: 大凶

太白入熒(庚+丙)

  • 構成要素: 天盤の庚が地盤の丙に加わる組み合わせです。
  • 格局名/特徴: 太白入熒格、賊格とも称されます。庚は太白金星(賊人)、丙は熒惑火星を表し、古書には「太白入熒賊即来」(太白が熒惑に入れば賊が来る)と記されています。陽火が陽金を剋するため、大凶とされます。
  • 主要な象意と判断: 主は破財し、客は得る象意があります。盗賊の予測では、賊が必ず来ることを示唆します。騒動の予測では、庚が内盤に落ちれば来るが、外盤に落ちれば叫ぶだけで来ない。盗賊を防ぐ場合は固守が上策とされます。
  • 吉凶判断: 大凶

熒入太白(丙+庚)

  • 構成要素: 天盤の丙が地盤の庚に加わる組み合わせです。
  • 格局名/特徴: 熒入太白格、賊格とも称されます。古書には「熒入太白賊即去」(熒惑が太白に入れば賊が去る)と記されています。陽火が陽金を剋するため、大凶とされます。
  • 主要な象意と判断: 门户破敗、盗賊による耗失、事業も凶となります。主客の予測では、主に有利で客に不利とされます。
  • 吉凶判断: 大凶

青龍逃走(乙+辛)

  • 構成要素: 天盤の乙が地盤の辛に加わる組み合わせです。
  • 格局名/特徴: 青龍逃走。乙木(陰木)と辛金(陰金)は陰が陰を剋する関係であり、辛金が乙木を剋するため、虎が強く龍が弱い象意があります。強者が弱者を剋するため、大凶とされます。
  • 主要な象意と判断: 主客双方に不利となります。奴隷が主人の財産を盗む、子供が誘拐される、家畜が死傷するといった事象が起こりやすいです。商売は破財、結婚は離婚、恋愛は破局の象意があります。一般的に女性が先に離婚を申し出るか、妻が夫のもとを去ることを示唆します。兵を動かすのに不向きであり、敗亡の禍があります。
  • 吉凶判断:

白虎猖狂(辛+乙)

  • 構成要素: 天盤の辛が地盤の乙に加わる組み合わせです。
  • 格局名/特徴: 白虎猖狂。金陰が木陰を剋する関係であり、白虎が上、青龍が下で、強者が弱者を剋するため、大凶とされます。
  • 主要な象意と判断: 主客双方に不利となります。家が破滅し人が亡くなる、遠行は多くの災難に遭遇します。商売は破財、出入りに驚きと恐れがあり、何事も大凶とされます。結婚は男性が女性を捨てる象意があります。
  • 吉凶判断: 大凶

朱雀投江(丁+癸)

  • 構成要素: 天盤の丁が地盤の癸に加わる組み合わせです。
  • 格局名/特徴: 朱雀投江。丁は陰火で南方の朱雀、癸は陰水で北方の江河に似るため、朱雀が江河に落ちる象意があります。陰水が陰火を剋するため、大凶とされます。
  • 主要な象意と判断: 文書問題、音信不通、官司口舌、または驚きや怪異、訴訟に不利、裁判は必ず負けます。あらゆる事柄が凶となります。
  • 吉凶判断: 大凶

騰蛇夭矯(癸+丁)

  • 構成要素: 天盤の癸が地盤の丁に加わる組み合わせです。
  • 格局名/特徴: 騰蛇夭矯。癸は陰水で北方の玄武亀蛇、丁は陰火を表します。天盤の騰蛇が地上の火中に落ち、火に焼かれて屈伸する象意があります。陰水が陰火を剋するため、大凶とされます。
  • 主要な象意と判断: 文書官司、虚驚不寧、火災を免れない、あらゆる事柄が不利となります。反復無常で、口舌の是非が多いとされます。
  • 吉凶判断: 大凶

反吟大格(庚+癸)

  • 構成要素: 天盤の庚が地盤の癸に加わる組み合わせです。
  • 格局名/特徴: 反吟大格、大格とも称されます。甲申庚と甲寅癸は寅申相冲の関係にあり、庚は道路を意味するため、交通事故が多いとされます。
  • 主要な象意と判断: 行人は来ず、官司は止まず、商売は破財、出産は母子ともに傷つきます。車両が破壊され、馬が斃れる象意があります。
  • 吉凶判断: 大凶

小格/移蕩格(庚+壬)

  • 構成要素: 天盤の庚が地盤の壬に加わる組み合わせです。
  • 格局名/特徴: 小格、移蕩格とも称されます。壬水は流動、庚は阻隔の神を表します。
  • 主要な象意と判断: 遠行は道に迷う、男女の音信不通となります。求謀は破財し病気を得ます。仕事は変動が多く、結婚は離散が多いとされます。情報や道路が不通になる象意があります。
  • 吉凶判断:

刑格(庚+己)

  • 構成要素: 天盤の庚が地盤の己に加わる組み合わせです。
  • 格局名/特徴: 刑格、官府刑格とも称されます。奇門九宮で、甲申庚位に未、甲戌己位に戌があり、未が戌を刑するため、刑格となります。
  • 主要な象意と判断: 官司口舌、官司により刑罰を受けます。商売は破財、外出は病気になります。重い獄囚の人は伸冤しにくいとされます。
  • 吉凶判断:

天網四張(癸+癸)

  • 構成要素: 天盤の癸が地盤の癸に加わる組み合わせです。
  • 格局名/特徴: 天網四張
  • 主要な象意と判断: 行人は仲間を失い、病気や訴訟は双方に傷つきます。何重にも閉塞され、屈抑して伸びません。逃げ場がない象意があります。
  • 吉凶判断: 大凶。ただし、天網の高さ(宮位による)によっては突破可能とされます。

歳格、月格、日格、時格(庚+年/月/日/時干)

  • 構成要素: 庚が年干、月干、日干、時干に加わる組み合わせです。
  • 格局名/特徴: 庚が日干に加わる場合は「伏干格」とも称されます。庚は阻隔の神、絆を意味します。
  • 主要な象意と判断: あらゆる事柄において大凶となります。特に庚が日干に加わる「伏干格」は、主客双方に傷つき、特に主に不利とされます。盗賊の捕獲や行方不明者の捜索には有利とされます。
  • 吉凶判断: 大凶

悖格(丙+値符/年月日/時干)

  • 構成要素: 丙が天地盤の値符に加わる、または丙が年月日時の天干の上に加わる組み合わせです。丙が丙に加わる場合も「悖」となります。
  • 象意: 丙は天威であり、性格が威猛で暴躁すぎるため、乱臣賊子や反逆者が出やすく、事態を混乱させる象意があります。行動は逆行し、目的達成が困難となります。尊卑が不和で、目上の者や上司と衝突しやすいです。
  • 吉凶判断: 。ただし、丙は月奇であり、吉門と遭遇すれば好転するため、一律に凶格とは断定できません。

六儀撃刑

  • 構成要素: 甲子戊が震三宮(子刑卯)、甲戌己が坤二宮(戌刑未)、甲申庚が艮八宮(申刑寅)、甲午辛が離九宮(午午自刑)、甲辰壬が巽四宮(辰辰自刑)、甲寅癸が巽四宮(寅刑巳)といった組み合わせです。
  • 象意: 下位の者が上位の者を犯す、臣が君を欺く、酒色に溺れる、争執、権力争い、自らを害する、計画が乱れる、顛倒錯乱、疑い深く決断できないといった象意があります。
  • 吉凶判断: 奇門遁甲において極めて凶とされ、他のどの格局よりも凶です。いかなる行動もすべきではなく、行動すれば必ず災難に遭遇するとされます。天網四張と重なると、必ず捕獲され、牢獄の災いがあります。

三奇入墓

  • 構成要素: 乙奇が乾六宮(乙の墓は戌)、乙奇が坤二宮(乙の墓は未)、丙奇が乾六宮(丙の墓は戌)、丁奇が艮八宮(丁の墓は丑)に落ちる組み合わせです。
  • 象意: 物事が暗昧で、しようとしてもせず、進もうとしても退き、疑い深く決断できず、反復して落ち着きません。客の事が多く乖離し、出会っても出会わず、良い事が退き、計画が失意に終わり、明るい場所から暗い場所へ投じる象意があります。
  • 吉凶判断: です。あらゆる事柄において不向きであり、謀事は全て休止となります。吉事は吉とならず、凶事は凶とならず、無力な象意があります。

三奇受刑(三奇受制)

  • 構成要素: 乙奇が乾六宮、兌七宮に落ちる、または地盤の庚金、辛金に臨む(木が金郷に入るため受制)。二奇が坎一宮に落ちる、または地盤の壬水、癸水に臨む(火が水郷に入るため受制)組み合わせです。
  • 吉凶判断: です。行動すべきではないとされます。

時干入墓

  • 構成要素: 丙戌時(丙が乾六宮)、丁丑時(丁が艮八宮)、戊戌時(戊が乾六宮)、己丑時(己が艮八宮)、壬辰時(壬が巽四宮)、癸未時(癸が坤二宮)といった組み合わせです。
  • 吉凶判断: です。

門迫

  • 構成要素: 八門と九宮の生克関係において、門が宮を剋する場合を指します。
  • 象意: 吉門が門迫に遭遇すると吉事が成就せず、凶門が門迫に遭遇すると凶事がさらに凶となります。
  • 吉凶判断: 吉門が宮を剋すると吉事が吉とならないか、吉の要素が減少します。凶門が宮を剋すると凶事がさらに凶となるか、凶の要素が増強されます。

大局伏吟

  • 構成要素: 九星、八門が本宮で動かない状態、または天盤と地盤の天干が同じである状態を指します。
  • 象意: 破財傷人、心労、苦痛の象意があります。主客の論では主に有利で客に不利とされます。距離は近く、時間は遅いです。内外では内部、熟人、知人を意味します。
  • 吉凶判断: 投資には不向きで大忌とされます。財産を収斂する、借金を取り立てる、商品を仕入れる、固守するのに良いです。天顕時格と重なると吉となります。

大局反吟

  • 構成要素: 九星、八門が対冲の宮に落ちる状態、または天盤が戊で地盤が辛、己が壬、庚が癸、辛が戊、壬が己、癸が庚といった組み合わせを指します。
  • 象意: 不順、反復の象意があります。外出は途中で引き返す、何事も途中で挫折します。事柄が何度も繰り返されます。病気は、最近の病気は回復するが、長患いは治りにくいです。商売は破財、赤字。受験は不合格。拘留されている場合は釈放されます。官運は昇進しないが、官職の回復は可能です。恋愛は成就しません。距離は遠く、時間は速いです。内外では外部、見知らぬ人、外部の者を意味します。
  • 吉凶判断: 求財には不向きであり、財を得るどころか損をするとされます。予測対象の符号が吉門、吉格に遭遇すれば救いがありますが、そうでなければ凶災が訪れます。人探し、物探しでは、人や物が必ず戻ります。盗賊の捕獲や事件の解決は可能とされます。

五不遇時

  • 構成要素: 予測の日干に対して、時干が日干を剋する陰干、または日干を剋する陽干である場合を指します。これは日干から数えて7番目の時干で、間に5つの干が隔たることからこの名があります。例として、甲日庚時、乙日辛時、丙日壬時、丁日癸時、戊日甲申時、己日乙時、庚日丙時、辛日丁時、壬日戊時、癸日己時が挙げられます。
  • 吉凶判断: 大凶とされます。病人を予測すると死期が近いと判断されることもあります。ただし、予測時には格局の良し悪し、門星の吉凶も考慮し、一律に判断すべきではないとされます。

IV. 十干克応と格局の複合的解釈

十天干の基本象意と相互作用

奇門遁甲における天干は、それぞれが固有の基本象意を持ち、その組み合わせによって多様な格局を形成します。これらの象意は、事物の性質や状態、人物の性格、さらには特定の事象の発生傾向を示唆します。

  • : 福星、財利、首領、元首、喜慶、奨金といった吉利な象意を持ちます。
  • : 天徳、蓬星の象意を持ち、協力に適し、女性、妻、多情、副手、心優しい、湾曲、間接的といった性質を表します。
  • : 天威の象意を持ち、直接的、暴力的、短気、邪気を破る、権威、権臣、反逆、衝突、範囲を超えるといった性質を表します。
  • : 玉女、文星の象意を持ち、文化、教育、創作、思考、情報、文官、俊秀、優雅といった性質を表します。
  • : 天武、征戦、財利、動向、計画、中立、長官、財物、資金といった象意を持ちます。
  • : 廉星、地戸の象意を持ち、陳腐、過去、守旧、頑固、忠厚、廃品といった性質を表します。
  • : 太白、天獄の象意を持ち、破壊力、凶を助け吉を抑える、冶金、盗賊、敵対者、殺傷、奸詐、凶険、金属、損害といった性質を表しますます。
  • : 白虎、天庭の象意を持ち、刑罰、囚人、困苦、過ち、小人、停滞、装飾品といった性質を表します。
  • : 地網の象意を持ち、変化無限、動的、流動、大雨、阻滞、水道管といった性質を表します。
  • : 華蓋、天網の象意を持ち、罠、虚怪、遺失、破耗、感情、トイレ、隠蔽といった性質を表します。

これらの天干が天盤と地盤で組み合わさることで、「十干克応」と呼ばれる膨大な数の格局が形成されます。各組み合わせは、その天干が持つ本来の五行生克関係や象意に基づいて、特定の意味合いと吉凶判断を持ちます。

各天干の組み合わせが形成する格局とその象意・吉凶判断

奇門遁甲における十干克応は、天盤の天干と地盤の天干の組み合わせによって形成される格局であり、その象意と吉凶判断は多岐にわたります。以下に、主要な十干克応の格局を一覧で示します。

構成要素 (天干の組み合わせ)格局名/特徴主要な象意と判断吉凶
戊+戊双木成林万事閉塞阻遏多、静守為吉。信は必ず来る。吉中帯凶
戊+乙青龍合会、青龍入雲同僚や友人の助け、凡事主客均利。
戊+丙青龍回首諸事大吉大利。土木工事、宅室光輝、父子大利。大吉
戊+丁青龍耀明陰からの助け、迅速。仕事、官職、学業、文化、事業に大利。
戊+己貴人入獄、青龍相合格公私ともに不利。財運、婚姻の喜び。凶中帯吉
戊+庚値符飛宮、青龍失勢格吉事が吉とならず、凶事がさらに凶。商売は破財、病気は凶。大凶
戊+辛青龍折足諸事阻滞、破財招災、足の負傷。
戊+壬青龍入天牢、青龍入獄格陰陽事ともに不利。客観的な環境や条件に制限される。
戊+癸青龍華蓋首尾が応じず、意見の相違。婚姻感情や協力取引に適する。吉中帯凶
乙+戊奇入天門、屯羅絆木万事皆旺、大人に会うのに有利。
乙+乙日奇伏吟、奇中伏奇格面接や名声を求めるには不向き。安分守己が良い。
乙+丙奇順吉格、日月並行最初は明るく、後に暗くなる。仕事や官職に有利。吉中帯凶
乙+丁奇儀相佐、奇助玉女格遅れても迅速に得られる妙。女性の助けがある。
乙+己日奇入霧、月入地戸格凡事暗昧で計画しにくい。蒙蔽や侵犯の意。
乙+庚太白奇合柔をもって剛を制する。婚姻の喜び。金銭の是非に注意。吉中帯凶
乙+辛青龍逃走、龍逃走破財しやすい。女性が男性から逃げる。
乙+壬奇神入獄主客ともに固守すべき。訴訟の是非を防ぐが、諸事不実。
乙+癸奇逢羅網、奇臨華蓋隠遁して修道、災いを避ければ吉。凡事阻閉。凶中帯吉
丙+戊飛鳥跌穴、奇逢重生格主客ともに有利。計画や設計、百事可能。大吉
丙+乙日月並行格、月出滄海協力、共同謀議に有利。文化的な事柄に有利。
丙+丙双鳳斉鳴、月奇悖格文書が逼迫、破耗や遺失。有始無終。
丙+丁星月生輝光り輝き、美しく艶やか。貴人、文書、学業、仕事に有利。
丙+己奇入明堂、火悖入弄文書に不利、阻力、刑囚。凶多吉少。
丙+庚熒入太白盗難、遺失。家門の破敗。家庭内の争い。大凶
丙+辛奇神生合恩威並び行い、礼儀をもって交わる。謀事成就。
丙+壬奇神遊海、火入天網官職を求めるのにのみ有利。凡事不実を防ぐ。凶中帯吉
丙+癸奇逢華蓋諸事吉。小人が権力を握り、災禍が続く。吉中帯凶
丁+戊玉女騎龍格、青龍得光命を占えば大貴。凡事皆吉。官職を占えば昇進。大吉
丁+乙玉女奇生格スパイ活動、奇襲、鬼を追い払う。仕事、婚姻、財運に有利。
丁+丙星随月転、奇神合明貴人に従って事をなすのに有利。大いに活躍できる。
丁+丁奇神相投格、奇合重陰文書がすぐに届く。諸事計画可能。争いを恐れる。吉中帯凶
丁+己玉女施恩格、火入勾陳陰私な事がある。物事が意気投合する。吉中帯凶
丁+庚玉女刑殺、悖格文書が阻隔される。凡事強引に進めるのは難しい。
丁+辛玉女伏虎、朱雀入獄凡事困難。計画が成就しにくい。客として罪人を釈放するのに有利。凶中帯吉
丁+壬奇儀相合、玉女乗龍遊海百事成就。貴人の補助がある。私情に関わる。
丁+癸朱雀投江文書や音信の紛失。計画に不利。大凶
己+戊犬遇青龍、明堂合青龍門が吉なら謀望成就、上人に喜ばれる。
己+乙地戸逢星、日入地戸格遁跡隠形、修仙修道に良い。凡事暗昧で計画しにくい。吉中帯凶
己+丙火悖地戸、火炎土燥男性は冤罪、女性は淫乱。凡事屈抑して伸びず。
己+丁朱雀入墓、星奇入墓文書、訴訟は、最初は曲がっていても後に正される。吉中帯凶
己+己地戸逢鬼、玉堂逢地戸病人は必ず死ぬ。何事も成就しない。固守すべき。大凶
己+庚刑格返名、明堂伏殺格訴訟は先に動くと不利。謀害を防ぐ。
己+辛游魂入墓家の冤罪が祟る、驚くべき怪異な事。子供に災い。
己+壬地網高漲狡猾な少年少女、奸情殺傷。男女ともに傷を負う。
己+癸地刑玄武男女ともに病気で危篤、訴訟は牢獄の災い。凡事反復。
庚+戊太白伏宮、刑青龍格百事不可謀為、大凶。地盤の移動の象意。大凶
庚+乙太白逢星、太白和合退けば吉、進めば凶。凡事計画が全て順調。凶中帯吉
庚+丙太白入熒賊が必ず来る。主は破財、客は得る。盗難、遺失。大凶
庚+丁亭亭之格、太白受制私的な隠匿により官司が起こる。文書の争論。
庚+己官府刑格、刑格官司官司により重刑を受ける。重い獄囚の人は伸冤しにくい。
庚+庚太白同宮官災横禍、兄弟不和。凡事凶。自刑の象。大凶
庚+辛白虎干格、両強相持の象道路での死傷事故、交通事故。感情的な別れ。大凶
庚+壬移蕩格、小格、蛇格遠行は道に迷う、男女の音信不通。情報や道路が不通。
庚+癸反吟大格、大刑之格行人は来ず、官司は止まず、商売は破財、出産は母子ともに傷つく。大凶
辛+戊困龍被傷、龍虎争斗官司破財。凡事不和。手足を傷つける。
辛+乙白虎猖狂家が破滅し人が亡くなる、遠行は多くの災難。大凶
辛+丙干合悖師、威権作合の象事柄は必ず財産問題で訴訟になる。凡事吉昌。凶中帯吉
辛+丁獄神得奇、白虎受傷商売は倍の利益を得る、囚人は赦免される。吉中帯凶
辛+己入獄自刑訴訟が伸冤しにくい。凡事破財を主る。
辛+庚天獄自刑、白虎出力凡事計画に不利。凡事反復して遅滞し、憂いと驚き。
辛+辛伏吟天庭公事は廃れ私事は成就。訴訟は自ら罪を負う。
辛+壬凶蛇入獄二人の男性が一人の女性を争う。訴訟が止まない。
辛+癸天牢華蓋、牢華蓋自ら羅網に投じる。凡事最初は塞がり、後に通じる。凶中帯吉
壬+戊小蛇化龍、青龍破獄格男性は発達、女性は子供を産む。凡事障害がある。吉中帯凶
壬+乙小蛇得勢、日入九地女性は柔順、男性は順調。妊娠を占めば男の子が生まれる。吉中帯凶
壬+丙水蛇入火官災刑禁、禍が重なる。凡事不利。
壬+丁干合蛇刑、玉女合獄神文書や財運に喜び。女性に大いに有利。
壬+己反吟蛇刑、凶蛇入獄大禍が迫る。夫婦不和。破財の格。
壬+庚太白擒蛇訴訟は公平、邪正がすぐに判明。逃走、流動。吉中帯凶
壬+辛騰蛇相纏、白虎犯格謀望は人に欺かれる。内部の欺瞞を防ぐ。反復不定。
壬+壬蛇入天羅、羅網自纏外部の人が絡みつく。内部の事が煩雑。凡事破敗。
壬+癸幼女奸淫、計窮力謁家庭不和。私情や淫佚。計画が尽き力が尽きる。
癸+戊天乙会合、青龍入地貴人の助けにより成就、結婚や財産に喜び。
癸+乙華蓋逢星、日沉九地男性の貴人の扶助。陰からの助けがあるが、遅疑して迅速でない。吉中帯凶
癸+丙明堂犯悖、華蓋悖師凡事陰塞。貴人が訴訟に巻き込まれる。小人が依りどころを得る。凶中帯吉
癸+丁騰蛇夭矯口舌、官司、紛争。火災を免れない。凡事不利。
癸+己華蓋地戸男女ともに音信不通。災害回避が上策。凡事消耗が多い。
癸+庚太白入網、大格暴力的な争訟、自ら堕落する。凡事計画が成就しない。
癸+辛網蓋天牢、牢華蓋病気や訴訟は、死罪を免れない。自ら羅網に投じる。大凶
癸+壬復見騰蛇、天網逢天獄結婚は再婚、晩婚は子がない。凡事不利。
癸+癸天網四張行人は仲間を失い、病気や訴訟は双方に傷つく。大凶

格局解釈における多層的な視点:門・星・神・宮との関係性

奇門遁甲の格局解釈は、単に天干の組み合わせが示す意味を読み取るだけでは不十分です。これは、複数の要素が階層的に相互作用し、その文脈に応じて意味が変調される複雑な体系です。したがって、柔軟な分析と適切な判断が不可欠であり、杓子定規な適用は避けるべきであると強調されています。

格局の最終的な吉凶や象意は、以下に示す複合的な判断要素によって決定されます。

  • 十天干の生克の本来の意味: 天干同士の五行的な相生相剋関係は、格局の基本的な性質を決定します。例えば、戊加丙は甲木が丙火を生じる象意であり、母と子が再会するような大吉大利を示します。一方で、陰が陰を剋する関係(例:乙木が辛金を剋する)や、陽が陽を剋する関係(例:甲木が庚金を冲する)は、一般的に凶と判断されます。
  • 奇門格局の象意: 個々の天干の組み合わせが持つ固有の象意も重要です。例えば、戊は甲子の「子」を表しますが、これが震三宮(地支卯)に落ちると子卯相刑の関係となり、本来吉であるはずの事柄が凶に転じる可能性があります。また、戊が甲の墓である戌が位置する乾六宮に落ちると「入墓」となり、その力が抑制される象意を持ちます。
  • 八門の象意との組み合わせ: 人盤を司る八門の吉凶は、格局の解釈に大きな影響を与えます。例えば、戊加丙という吉格であっても、それが休門(水)と離九宮(火)に遭遇した場合、門が宮を剋する「迫」の関係が生じ、吉事が凶に転じることがあります。これは、人の行動が環境によって阻害される状況を示唆します。
  • 特定の象意: 各天干や特定の組み合わせには、それ自体が持つ具体的な象意があります。例えば、戊加己は「貴人入獄」という格局名を持ち、戊が甲木の墳墓である己(甲戌の戌)に加わることで、戊が入墓する象意となり、公私ともに吉利ではないことを示します。
  • 奇門が与える新たな意味: 奇門遁甲の体系内で、特定の天干には特別な象意が付与されています。例えば、「甲」は青龍、「庚」は白虎、「壬」は天牢、「癸」は地網といった象意を持ちます。戊加壬は「青龍入天牢」という格局名を持ち、これは躍動する龍が困難な状況に陥る象意であり、慶事も弔事も吉利ではないと判断されます。

これらの多層的な判断要素が絡み合うことで、格局の最終的な意味が形成されます。例えば、癸加癸の「天網四張」は一般的に逃げ道がないことを意味する大凶格ですが、その吉凶は天網の高さによって変調されます。直符が第一、第二、第三宮といった低位の宮にある場合は「低網」とされ、突破の道があることを示唆します。しかし、直符が第四から第九宮といった高位の宮にある場合は「高網」とされ、逃れることが非常に困難であると判断されます。このような複合的な解釈の必要性は、奇門遁甲が単なる固定された法則の集まりではなく、絶えず変化する宇宙のエネルギーと人間の状況を動的に反映する「生きた」システムであることを示唆しています。異なる学校や流派が存在し、特定の格局に対して微妙に異なる解釈や強調点が見られるのは、このシステムの持つ柔軟性と深遠さの表れです。したがって、奇門遁甲の専門的な解釈は、個々の格局の定義を暗記するだけでなく、それらが置かれた文脈、他の要素との相互作用、そして盤全体の動態を総合的に判断する能力を要求されます。

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